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「尊様、おかえりなさいませ」
「えぇ、ただいま帰りました」
長い長い車の移動が終わり、俺は荘厳たる雰囲気の日本家屋の前に立っていた。
和服のよく似合う老齢の執事に付き添われ、幾ばくかぶりの実家へと足を踏み入れる。
「…お爺様と父様はどちらに」
「はい、お二人とも離れのお部屋にいらっしゃいますよ」
「そう…」
ゆっくりと長く長く続く廊下を歩く。
右手に見える日本庭園を眺め、角を左に。
本邸の一番日当たりがいい部屋。
そこが俺の部屋だった。
襖をゆっくりと開く。
冬にここを出たときと変わっていない。
掃除は定期的にされているようで、埃は溜まっていないが、何ヶ月も人が滞在しなかった部屋はやけに寒く感じられた。
「……はぁ」
無意識にため息を一つ。
ゆっくりと箪笥の前に立ち、ここでの普段着を取り出す。
足袋を履き、着物と武者袴。帯を締め、髪を結い直す。
姿見に映る自分は、学園で浮かべていた笑顔の面影も何もない、人形のような顔だった。
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