1284人が本棚に入れています
本棚に追加
「おかえりなさいませ」
「「おかえりなさいませ」」
入ってくる高級車の周りに立ち、一家総出で出迎える。
その様子は、さながらどこかの任侠映画で見たような光景だ。
「みな出迎えありがとう、久しいな」
「よくいらっしゃいました。どうぞごゆるりとお寛ぎください」
車からまず降りてきたのは、美形の二文字が未だに損なわれない、厳しそうな印象を持たせる菖蒲の現当主。
ぐるりとこちらを一瞥し、労わりの言葉を口にするあたりがやり手だな。
使用人たちの評価も軒並み高いお方なだけはある。
「お久しぶりです。しばらく世話になります」
続いて降りてきたのは、当主によく似た年若い男。
「雪兎様も、ようこそいらっしゃいました」
祖父と母方の系譜らしい灰色の瞳と同じ色の髪。
表情は硬いが柔らかく細められる瞳が、現当主よりも幾分か柔らかい印象を与える。
「尊、こちらへ」
「はい、お祖父様」
名前を呼ばれ、皆の視線が集まるが、いつものことなので、気にも止めずに歩みを進める。
数歩歩いた先、菖蒲の当主の前で頭を垂れた。
最初のコメントを投稿しよう!