1284人が本棚に入れています
本棚に追加
「お久しゅうございます。真白様、雪兎様。ご滞在中はどうぞごゆるりとお過ごしいただけますよう、我ら緋扇に何なりとお申し付けくださいませ」
顔を上げ、にっこり笑う。
相変わらず表情の変わらない親子だ。
しかしその裏には、人の上に立つ者の素質を秘めていることを知っている。
故に、様々なものを含んだ笑みは、ご当主様たちには丸わかりのようで。
「久しいな、尊。相変わらず、自己を磨いているようで何より。しばらくは倅が世話になる」
「…よろしく頼む」
先ほどまで硬かった表情がゆっくりと溶けていく様子に、控えていた使用人たちの顔がうっとりと緩むのを見た。
揃いも揃ってこういうところがずるいんだよなぁ。
目の前の御仁には上手を取られたし、その子息は全てをわかって微笑まれた。
皆が浮き足立っていることを肌で感じる。
こうなって仕舞えば、負けだ、負け。
最初のコメントを投稿しよう!