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「尊」
「はい、真白様」
名を呼ばれ、伏せていた目をあげると、意志の強いまっすぐな目に射抜かれた。
その視線から与えられる、全てを見抜かれている様な感覚。相変わらず苦手だ。思わず目を逸らしたくなる。
「お前は良かったのか」
告げられた言葉に、無意識に口角が上がるのを感じた。
何が、とは聞かない。
答えは全て分かった上で聞いているだろうし、俺も分かっていて答えることだ。
部屋の中にいる全員の視線が突き刺さる。
人はこれを"プレッシャー"と呼ぶらしい。
けれども少しでも怯むと負けなことなど、嫌という程知っているため、表情は今なお嫋やかに
微笑むまま。
「承知の上です」
幼い頃たった一度だけ願った自らの望みは、今なお色褪せることはない。
あいつが俺を望んでくれるならば、願ってくれるならば。
それを最優先で叶えるのが従者の務めだろう。
「承知した。ーーーーお前は相変わらずだな」
仕方なさげに告げられた言葉に頭を垂れることで返答し、その後は穏やかに、交わされる言葉に耳を傾けたのだった。
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