「ーーー気がつかなかったのか、自分が笑っていた事にも」

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「で、何かしたいことはあるか?」 朝食が冷めると準備を急かしながら、着替えている間に手早く布団をたたみ、夜用に設置していた間接照明を片付ける。 「……特にない。お前は一緒に部屋にいればいい」 はい、不健康発言いただきましたー。 元々活発に外に出る方ではないのは知っていたが、ここまで出不精だと心配になるなあ。 「天気もいいし、外に出ないともったいねぇだろ?」 着替え終わった雪と洗面所に向かいつつ、気晴らしになりそうな事がないか考えてみた。 ……あ、そうだ。 確か毎年、近くの神社でアレがあったはず。 「俺、お前と一回はどっか行きてえな」 隣に並ぶ美しい顔を見上げる。 横目で見下ろされる瞳に視線を絡め、只管にその灰を覗き込んだ。 やがて視線が逸らされ、ため息をつきながら雪が口を開く。 「……好きにしろ」 「うん、楽しみだ」 幼い頃から、頼み事をするときにこれをすると大体は折れてくれる。 優しい主人で俺は幸せです。
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