「ーーー気がつかなかったのか、自分が笑っていた事にも」

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♢ 暖かな日差しと涼やかな空気を体いっぱいに感じる今日この頃。 「お天気で良かったですね」 「………」 外行き用の着物に着替え、小さな巾着に二人分の金と携帯を投入。 仏頂面の我が主人に楽しみアピールをすると、お返しと言わんばかりに小さくため息をつかれた。 雪が草履を履くのを待つ間、見送り待ちの使用人達の一部が恍惚とした表情でこちらをみていた。 ついでにきゃっきゃと不穏な会話も聞こえてくる。 尊は 微妙な心境で 知らんぷりを した 『やっぱりお似合いね、お二方…きゃっ』 『そういえば昨日は尊様、雪兎様のお部屋にずっとついてらしたんですって!きゃっ』 『まさに美男美女…沸るわぁ…きゃっ』 ……尊は 微妙な心境で 知らんぷりを した 『尊様の尽しっぷりもそうだけど、雪兎様の溺愛ぶりも負けてないわね…きゃっ』 『きっと昨夜はめくるめる魅惑のラビリンスでパーリナイだったのよ!きゃっ』 尊は 微妙な心境で 知らんぷりを したかった 美女とはなんだ。魅惑の迷宮でパーティーナイトなんて意味がわからない。 難しい顔で数秒悩んだ結果。 尊は 気になる点が多過ぎて 考えるのを 放棄した
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