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「……ん」
ぼんやりと外を眺めていると、準備が整った雪が隣に並ぶ。
仕立ての良い紺の着物を着たその姿に、皆の視線が集まるのを感じた。
当の本人は集まる視線を気にもせずに、外を眺めている。
相変わらず何もしていないのに存在感がある男だ。
「では、行きましょうか」
「あぁ」
数歩歩いて振り返る。
使用人たちは両端に並び、皆揃って礼を取っていた。
『いってらっしゃいませ。雪兎様、尊様』
雪が先に挨拶するのを待って、俺も口を開く。
「行ってまいります」
同じタイミングで歩き出した俺たちの後ろ姿を見て、また不穏な悲鳴が上がる。
……うちの使用人、大丈夫だろうか。
「どうした、尊」
相変わらずの仏頂面で見下ろしてくる雪の顔を見る。
先程の会話も気がついていただろうに、気にも止めない様子である。
「…いいえ、なにも。行きましょう」
紺色の着物の裾を緩く引き、歩みを少しだけ早める。
雪も抵抗しないまま、ゆったりと2人歩を進めた。
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