「ーーー気がつかなかったのか、自分が笑っていた事にも」

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「あ、おみくじ。雪兎様、やって行きませんか?」 藤棚を一頻り鑑賞し、少し歩いた先。 立派な境内の前には多くの参拝客がいた。 鳥居を潜る前に賽銭を手渡し一連の作法で無事お参りを済ます。 ちなみに俺は身長があと10センチは伸びるよう願っておいた。ちゃんと500円玉入れたかんな?御利益あるよな?な? ちなみに雪もずいぶん真剣に願っていたみたいだ。 なんせ、俺よりも長い時間手を合わせていた。 願いの内容は気になるが、他人に話すと叶わないと聞く。そんなことで主人の願いを無碍にする事はできない。 お参り待ちの行列から外れ、露店に向かおうとした時。 おみくじ売り場を見つけ、隣を歩く雪兎に声をかけた。 「そういえばしばらく引いてないな」 「ではやって行きましょう?せっかくですし」 早歩きで売り場に向かい2人分の料金を払う。 巫女さんの輝く笑顔に笑みを返し、振り返った。 「雪兎様」 早くこいと名前を呼ぶと、仕方なさそうにため息をつきこちらにやってくる雪。 御神籤箱を手渡し、自らも手に取った。
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