「ーーー気がつかなかったのか、自分が笑っていた事にも」

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カランカラン 木の棒が当たる音がして、小さく空いた穴から一本棒が出てきた。 「十五番」 「三十一番です」 2人して告げた番号の戸棚を慣れた様子で開ける巫女さん。差し出された紙を受け取り、覗き込んだ。 「凶 三十一番」 願望 叶うこと多し 神様に感謝せよ 待人 障害あり 倖せ少し 恋愛 思い伝わらず 誤解の恐れあり 失物 出るが 手間取る 病気 医者に頼れ 争事 長びけど勝つ さすが凶というべきか。散々な文句の並ぶ御神籤を眺める。 その中でもある項目に目が止まった。 「これは…」 思わずシワが寄る眉間に気がつき、急いで笑みを保つ。 運が逃げないうちにさっさと結んでしまおう。……あ、そういえば。 一緒に御神籤を引いた隣をチラリと見る。 「中吉 十五番」 そこにはそう書かれた紙をぼんやりと無感動に眺める雪が。 見下ろした紙から視線を離さず、僅かに細まった目から、少し不機嫌なことが伺える。どうしたかと尋ねるも無言で御神籤を折りたたみ、スタスタと結びに行ってしまった。 なんだか見覚えのある表情に少し心配になる。 中吉なのに縁起のいいことは書かれていなかったのだろうか。 しばしその後ろ姿を見ていたが、きっと聞いても教えてはくれないだろうと、 自らも空いているスペースに御神籤を結びに向かった。
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