1284人が本棚に入れています
本棚に追加
2人とも結び終わり、さて露店に向かおうと長い階段をひたすら降りる。
「さっきの…お前はどうだったんだ」
「はい?」
突然の質問に頭がなんのことだか弾き出すまで時間がかかる。
「神籤。俺のは見たろ」
あぁ、さっきの御神籤の結果か。
そういえば雪には何も言ってなかったな。
「私は凶でした。結構散々書かれていましたよ」
「…そうか」
こちらに残していた視線をまっすぐ前に向け、変わらぬスピードで降りていく雪の後ろ姿を眺める。
お前はどんな悪いことが書いてあったんだ、とは聞けなかった。
あの御神籤を眺める顔には見覚えがあったから。
昔、俺があいつに殴られた時。あん時に近い顔してたな。
起きてほしくない事が起こってしまった時の、絶望と怒りと苦しみを混ぜ込んだような顔。
それは、漠然と。
今後自らの身の振り方一つで、またあいつにあの顔をさせてしまう気がした。
あの時の後悔と痛みは忘れない。忘れてはいけない。
まぁそれは、今後とも気を抜かず行動するとして。
「でも……アレは、本当になると厄介だな」
小さくつぶやいた言葉は誰にも届かない。
ただ、それは転がる石のように。確かな予感だけを感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!