「ーーー気がつかなかったのか、自分が笑っていた事にも」

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「雪兎様、必要な方への挨拶は終わりましたので少しお休みになられますか?」 「あぁ」 「では、飲み物と食事を用意して参りますので座ってお待ちくださいませ」 準備と休養のため借りたホテルの一室に雪兎を送り、2人分の食事を確保すべく足早に会場へ戻る。 腹減ったなあと考えながら、角を曲がったその時。 どんっ 「おわあああ!?」 「……っ」 視覚から飛び出してきた人影に一瞬対応が遅れた。ぶつかった反動を殺し、倒れゆく相手の手を握る。そのままこちらに引き寄せればどうやら転倒は防げたようだ。 「大丈夫ですか?」 腕の中に収まった俺より幾分か大きい温もりに向け告げる。 「…って、え?俺、ぶつかって…。お前が助けてくれたのか!?」 うん。元気そうで何よりだわ。 上から降ってくる声が大きすぎて、クラクラしながらも相手の体制を整え一歩離れた。 「申し訳ございません、前方不注意でした。お怪我はございませんか?」 「…………」 ぶつかった相手に声をかけるも、何故か俺の顔を凝視し固まっている。 なんなんだよ。本日2回目ですけど??(キレ気味) 「あの、どうかなさいましたか?どこかお怪我でも…?」 とりあえず気持ちを落ち着かせ、再度声をかけてみた。すると、ようやく相手が動く。瞬きを一つ。ぱちり。 「あ、あぁ!大丈夫だ…です!そっちこそ怪我はないか!?…ですか!」 敬語下手くそかよ。
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