「ーーー気がつかなかったのか、自分が笑っていた事にも」

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「……そういえば、何やらお急ぎのようでしたが大丈夫ですか?」 「あ!そうだった!じいちゃんに呼ばれてるんだ!」 「それはお急ぎになったほうがよろしいかもしれませんね。お相手もご心配されているかと。」 よし死ぬ気で誤魔化そう。そう決意し話を違う方向に誘導する。 当初の印象通り単純な彼は綺麗に流されてくれていた。流されてくれていたのに。 「でも、俺まだ名前聞いてない!」 ここで思い出すのかよ。 例えるならば、あと数手で倒せたラスボスがいきなり回復魔法使ってきた時の絶望に近い感覚が胸をよぎる。 「…また次にお会いできたら、私の事をお教えしましょう」 こうなりゃヤケだ。 幾分か高いところにある頬に手を添え、耳元で小さく呟いた。 笑みを貼り付け離れると、そこには首まで真っ赤にした姿が。 「…では、私はこれで。失礼いたしますね」 ヤツが放心してる隙に優雅に笑って足早に会場へ戻る。 っあぶなかった!よくやった、偉いぞ俺! 自分を盛大に褒め称えながら歩く足取りは、思いの外軽かった。 その後、戻ってくるのが遅いと雪に一言言われながらも、謎の達成感すら湧いていた俺は上機嫌で全てを受け流していた。 「じいちゃん!!あいつ、俺の婚約者にする!どこに通ってるんだ!?」 先程あった宇宙人がそんな事を喚いてるとも知らずに。
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