「ーーー気がつかなかったのか、自分が笑っていた事にも」

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彼の方と対照的な濡羽色の髪。手入れが行き届いているのか、照明によって所々青く輝く夜を思わせる。 優雅な所作と、絶やすことのない嫋やかな微笑み、凛とした立ち姿。 一見すると対極的なのにどこか似た雰囲気を持っているふたり。すぐに彼の方の特別な人だと分かった。きっと、恋人なんだ…。 「……京子、あなたもしかして」 私の考えていることなどなんでもお見通しなお姉様が告げる。 「あんなに綺麗な方がお隣にいらっしゃるんだもの。私では振り向いてもくれないわ」 同じ白のテイストの和服を見に纏うお二人はとてもお似合いで。 和服とドレス、それだけでも隔てられた気がしていたのに。彼の方にはすでに添い遂げる方がいらっしゃるなんて、勝ち目がないにも程がある。 「京子…?あのね、尊様は…「いいの!」」 一目でわかる明確な事実を、よりにもよってお姉様の口から聞きたくなくて。 はしたなくも途中で遮ってしまった。 「お姉様、わかっているから大丈夫よ。初恋は叶わないというもの」 「京子…」 その後も、お姉様は何度かあのお二人についてお話ししてくれようとしたけれど、私が聞くのが怖くて受け入れなかった。
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