「ーーー気がつかなかったのか、自分が笑っていた事にも」

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「さぁ、我々も挨拶回りに向かうよ」 ぼんやりと彼の方々を眺めていると、小さく背を押された。 見上げるとお父様が微笑み、真っ先にある一方へ歩き出す。 「え、そっちは……」 彼の方達が、いる方向ーーー。 私の心情とは裏腹にズンズンと進んでいくお父様は気負いなく挨拶を始める。 「菖蒲様、緋扇様お久しぶりですな」 「黒崎様、お久しぶりですね」 「お久しぶりでございます」 ーーーーあれ? 彼の方がこんなに近いというのに、それよりも別のことが気になった。 彼の方の一歩後方で、伏目がちに微笑む美しい顔、艶のある美しいお声。 でも、 「お二人ともますますご立派になられましたな」 「ありがとうございます。学園生活で私も尊もいい刺激を受けておりますので」 「おお!お二人は如月学園にご在籍でしたね。そういえば、私も緋扇様の弓道の試合は拝見させていただきました。うちの京香もそれはそれは興奮していましたよ」 「お、お父様ったら」
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