1286人が本棚に入れています
本棚に追加
楽しげに話が進む中、お姉様の声が聞こえた途端、伏し目がちだった夜色の瞳が不意にこちらを捉えた。
相変わらず綺麗な微笑みを讃えるその唇が動く。
「こんなに綺麗なお嬢様に見ていただけているとは光栄です。これからも精進いたします」
あれーーー?
やっぱり…。少し、低い?
女性にしてはハスキーな、少年を感じさせる様なお声。
それに、先ほど聞いた如月学園は、確か男子校だったはず。
ということは、
「え?」
思い至った事実に唖然と声を上げる。
「京子は初めてだったわよね。菖蒲様、緋扇様、妹の京子です」
「あっ…黒崎 京子と申します。お会いできて光栄ですわ」
お姉様に背を押され、我に返った。
先程の独り言は聞かれていなかったようでホッとする。
そうして今日のパーティーの最初に粗相はしないよう言われていたことも思い出した。
私ったら、考え事をしている場合ではないわね。
「菖蒲 雪兎です。どうぞよろしく」
「初めまして、緋扇 尊と申します。以後よしなに」
ゆるりと微笑を讃えた挨拶にピシリと固まる。
同時に全身が茹だるように暑くなった。
何これ、なにこれ。こんなの、知らない。
ああ、これが。
やはりこれが一目惚れというものなのだろう。
「よろしく、お願いいたします」
ようやく絞り出した声は、小さく震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!