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「ただいま」
「あぁ、おかえり」
ガチャリとドアを開ける音がしたため、小走りで声の主を迎える。
「帰ってたのか」
「昨日な」
ここは第二の我が家である寮の2人部屋。
やっとルームメイトが帰ってきたのを、俺は上機嫌で出迎えていた。
「すげー量の土産だな。どっか行ったのか?」
手荷物が多い棗を手伝いつつ、リビングへと向かう。
土産袋を覗き込みながら聞くと、ソファに座った棗が疲れたように告げた。
「うちの母親に色々持たされた」
そう告げられ脳裏をよぎるのは、おっとりとした嫋やかな笑み。
「お前のお袋さん、心配性だよな」
きっとあれを持っていけこれを持っていけと騒がしく過ごしたのだろう。
うんうんと頷いて笑う俺を、棗は胡散臭げに見上げた。
「お前はどうだったんだよ…」
「実家で静かに過ごしただけだよ。たまに呼ばれたパーティーに顔は出したけどな」
にっこりと笑う俺に、深くは語る気がないと察したのか、呆れたように見てくる棗にまた笑う。
「ま、今回は退屈しなかったよ」
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