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♢
「棗」
各々が席を立つ中、気だるげに座る男に声をかける。
「ん」
声がかかることはわかっていたのだろう、音もなく立ち上がる姿は、一刻も早くここから帰りたいという思いがありありと伺えた。
「帰りましょうか」
「あぁ」
集まりが終わり、おやつはどうするだの、昼から出かけるだの聞こえてくる中、自分も、目の前の男も殊の外疲れていた。
2人とも、元々こういう場が好きではなく、しかも今回は自分も、棗も強制参加だったのだ。
棗の顔に、疲れの他に多少の不機嫌さも窺える。
その様子に苦笑が漏れた。
そうして連れ立って扉を潜ろうとした、その時ーーー。
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