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螺旋階段を上り、うずくまる小さな影を発見する。
その影は一瞬怯えたように肩を揺らしたが、俺の顔を見た瞬間こちらに飛び込んできた。
右肩が濡れ、頬をよせられた感触がする。
「僕っ、誰かに…!必死で、逃げ……っ」
この学園は初等部からのエスカレータ式の男子校だ。
必然的に恋愛対象も男になる。
特有の性質を持った男子校だからこそ、無理やり欲を発散させる輩も存在してしまうのだ。
「3年の佐藤先輩ですね。ご無事でよかったです。よくここまでたどり着かれましたね」
そう、専用パスを渡しているのは、要警護が必要な生徒達。
過去にそういう経験をしたことがある生徒達だ。
そっと背中に手を添え、抱き寄せる。
専用のパスを持つ生徒しか入れないこの図書館は、一時の逃げ場には最適だ。
図書委員長は代々図書室の静寂だけでなく、生徒の安全を見守り、誘う役割も持つ。
「今、風紀に連絡いたします。事情はおひとりで話せそうですか?」
「はいっ!ごめんなさい…僕泣いちゃって。ありがとうございます、緋扇様」
肩を支えながら体を離し、顔を覗き込むと、顔を真っ赤にして慌てて距離を取られた。
それに苦笑いを返し、携帯を取り出すと風紀委員の知り合いに電話を掛ける。
「もしもし、柏木ですか?例の件で第二図書館までお願いします」
連絡をしてから十数分後、風紀委員が第二図書館へとやってきた。
「珍しいですね、あなたがここに来るのは」
迎えに来た風紀委員の一人に声をかける。
「緋扇ちゃんに会えるんやから、来んわけ無いやろう?」
「相変わらずお上手ですね」
けらけら笑いながら手を振る男は、執行部の役員の一人、風紀副委員長だ。
「まぁ、緋扇ちゃんが図書委員長ならこれから関わりが増える訳やし、仲良くしようや」
そう言って、後ろ手に手を振りながら、先輩を保護していく柏木を静かに見送った。
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