1281人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
風紀委員たちを見送り、やっと一息つく。
「疲れた…」
読書用に設置された椅子に腰かけ、肩の力を抜いた。
そのままぼんやりと窓の外を眺めていると。
「災難だったな」
後ろから不意に声をかけられた。
「うるせぇよ、お前こそ珍しく式に参加してたんだな」
首だけ後ろに振り向き、そう答える。
そこには、たった今入ってきたとでもいうように入場カードを振り、こちらに歩いてくる棗がいた。
なんとなく、今日はどこかで会う気がしていたのだ。
いつもは参加しない式典に棗の姿をとらえた瞬間に。
あの時は、思わず目を疑ったものだ。
周りの生徒も、式典そっちのけで棗の事を凝視していたし。
「あぁ」
おや、なんだか不機嫌…?
いつもの無表情は変わらないが、いつもより低い声のトーン。
「どうかしたのか?」
「…いや」
どうやら答えるつもりはないらしい。
どういう心境の変化があったのやら。
ふーん、と一言返し、正面の椅子に腰かける棗から目をそらした。
最初のコメントを投稿しよう!