「あと、2年」

23/46

1281人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
「なあ、棗」 安堵を覚えてしまったことの罪悪感か、何時もの雰囲気から外れてしまったことの焦燥感か。 胸に溜まっていくもやもやした気持ちを消し去りたくて。 視線を逸らし、未だにこちらを見ない棗に声をかけた。 「何だ」 無愛想な顔を隠すことなくこちらを見る棗に、困ったように言葉を返す。 「これからの予定は?」 「…特にない」 思ったよりも素直に返された返事と表情に、やっといつもの調子に戻ったと緩く微笑んだ。 そうして丁度良く図書館に設置されている大時計の音が鳴り響く。 時刻は11:00。 昼まであと一時間か。 座っていた椅子から立ち上がり、棗を見下ろしながら告げる。 「俺は今から"青の宮"に行くけど、お前はどうする?」 「"青の宮"……あぁ、あそこか。何しに行くんだよ」 大分久しぶりに訪れるらしく、棗も存在を忘れていたようだ。 そのようなところに行くという俺を訝しげに見上げるその顔に、ニッコリと笑みを返す。 「下見と昼寝」
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1281人が本棚に入れています
本棚に追加