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あの寒かった日のことを思い出しなんともいえない気持ちになる。
無意識にため息をついていたらしく、恭介がなんだと聞いてくた。
それを軽くいなして、口を開く。
「別に、お話できる様な理由はありませんよ」
そのお綺麗な顔の眉間にシワが寄るのをぼんやりと見つめ、まぁ納得しないよなと小さく笑った。
「おい、ふざけてんのか」
握られた手に力が込められる。
少し痛いくらいのそれに眉をひそめ、こちらも負けじと握りしめた。
「…理由はないんですよ。強いて言うならば、神崎先輩の方が先に誘っていただいたというだけです」
そう、初等部の頃から通っていた図書館で出会った、当時の図書委員長。
彼に気に入られたのは、ある意味都合が良かった。
まぁ、先輩も俺も髪が長い仲間で、生徒からは武士と姫だの貴族と姫だの言われていたのは知っている。
どうして姫は固定なんだと憤慨した覚えがある。
「……そういえば、あの人はお前に随分と目を掛けていたな」
少しだけ手の力を緩めた恭介は、まだ納得行かなそうにしながらも体の力を抜き、再度隣に腰掛けた。
なんとか一息つけると、ほっと肩の力を抜く。
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