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『宝探しは終了しました。これより発表を行います!全校生徒の皆さんは講堂まで集まってくださーい』
ちょうど時間が来たらしく、放送が流れる。
「終わりましたね、恭介、行きましょう」
立ち上がり、歩き出すが、呼びかけた人物が動かない。
「恭介…?」
何やら考え込んでいる様子の恭介を再度呼ぶと、顔を上げ小さく声をかけられた。
「尊…お前、まだなんか隠してるだろ」
先ほどの返事では満足いただけなかったらしい。
これは、答えるまでテコでも動かない気だな。
俺は構わないが、あとあと面倒になりそうだ。
自然と、笑みが漏れる。
俺が笑ったことに驚いたらしい、そのお綺麗な顔が驚きで歪むのがなんだか面白かった。
「内緒、ですよ」
それはまるで演技の様に。
小首を傾げて、小さく笑って。
指を立ててポーズを取れば、完璧だろう。
「では。先に行ってますからね」
未だ固まる恭介を置き去りにし、ゆっくりと講堂へと足を進める。
ーーごめんな、恭介
ーーお前には教えることはできないんだ
ーーそれに、わからないだろう?
ーー俺がそこを選ばなかったわけも
ーー俺が決意したあの日の事も
ーー俺がこれからする決断の答えも
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