「あと、2年」

41/46

1281人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
そっと視線を滑らせると、痛いほどに目が合う人が数人。 そういえばこの人たちの前では、役員以外の人の話は曖昧にはぐらかしてたっけ。 初等部からの無意識といっても過言ではない習慣に思い至り、自分の危機回避能力に感心した。 うん、これ以上面倒なことになる前にさっさと進めよう。 「えっと、進めてもらってもよろしいでしょうか」 司会にそう告げると、いい笑顔を返された。 そのままノリノリでマイクパフォーマンスをする様子に司会を殴り飛ばしたくなる。 はよしろ。 「それでは!気を取り直して文月様、願い事をどうぞ!」 マイクを無表情で受け取る棗の様子に、なにを話すのかとあたりが静まり返る。 先ほどとの雰囲気の差に、思わず苦笑いを落とした。 そうして数秒。 相変わらずマイクを持つ手を下ろし、口元に当てる様子のない棗を不審に思い見上げる。 「……なつめ?」
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1281人が本棚に入れています
本棚に追加