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そっと視線を滑らせると、痛いほどに目が合う人が数人。
そういえばこの人たちの前では、役員以外の人の話は曖昧にはぐらかしてたっけ。
初等部からの無意識といっても過言ではない習慣に思い至り、自分の危機回避能力に感心した。
うん、これ以上面倒なことになる前にさっさと進めよう。
「えっと、進めてもらってもよろしいでしょうか」
司会にそう告げると、いい笑顔を返された。
そのままノリノリでマイクパフォーマンスをする様子に司会を殴り飛ばしたくなる。
はよしろ。
「それでは!気を取り直して文月様、願い事をどうぞ!」
マイクを無表情で受け取る棗の様子に、なにを話すのかとあたりが静まり返る。
先ほどとの雰囲気の差に、思わず苦笑いを落とした。
そうして数秒。
相変わらずマイクを持つ手を下ろし、口元に当てる様子のない棗を不審に思い見上げる。
「……なつめ?」
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