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低く、少し掠れた声が鼓膜を震わせる。
声とともに僅かな吐息が耳朶をくすぐり、びくりと肩が揺れた。
なにを。なんで。どうした。
頭が回らない。
どうしてこうなった。
ゆっくりと離れていく棗の顔を呆然と見上げる。
距離が開くことで、だんだんと広がっていく視界と音。
悲鳴にも似た生徒たちの声が、遠くで聞こえた。
先ほどよりも声量を増したそれは、耳が痛くなるもののはずなのに。
それよりも、先ほどの声が耳に焼きついて離れない。
耳が、顔が、どこもかしこも、熱い。
「っ……」
不意打ちにもほどがあるそれに動揺していることも、きっと赤くなっている顔を見られるのも恥ずかしい。
そうして羞恥心の中に、罪悪感があるのも確かに感じていて。
どうしようもない気持ちを、悟られまいと、見られまいと、顔をうつむかせる。
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