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それは蛍にとってはとても小さな呟きだった。
しかし、ガチャリという音とともに、併設されている音楽準備室から返答が返される。
見知った声に勢いよく顔を上げると、そこにはやはり見知った一人の男。
「…いたの、歩」
どうやら先ほどの言葉を聞かれていたらしい。
そう理解して少し気まずそうに視線をそらし言う。
歩と呼ばれた男は、蛍の反応にニコニコと笑顔を浮かべた。
「いたよー、僕は委員会なんて興味ないしィ、ここで昼寝してたの」
その歩の言葉に、サボリ魔が…と思ったが、自分も昨年まではそうだったと思い直す。
「歩一人だけー?」
ゆっくりと立ち上がり、自分の定位置である窓際の一番後ろの席に腰掛ける。
いつもは自分と歩と、あと二人の4人で集まることが多い。
あとの2人は一緒ではないのか。
「ルイ君はクジ引きでハズレ出した美化委員会の集まりにィ、トウ君は緋扇サマの様子見に図書館に行ったよォ」
歩もこの場所では定位置のピアノ用の椅子に腰かけそう告げた。
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