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「………っ」
"緋扇サマ"
その一言だけで、ピクリと体が無意識に反応する。
それに目ざとく気がついた歩が、からかう様にこちらを見た。
「それにしてもォ、ケイ君がまさか委員会に立候補するなんて、僕ビックリしちゃった。しかも図書なんてねェ」
それは昨日のこと。
委員会になど所属したことのない自分が初めて手を挙げた。
それは半ば衝動的に。半ば期待を込めて。
「うるさいよ」
窓の外を眺め視線を向けない蛍に、歩はため息混じりに笑う。
「ケイ君、そんなに興味あったならァ、トウ君のツテでもなんでも使って近づけばよかったのに」
委員会や部活にあまり積極的でない自分たちのクラスの委員会決めは、毎回押し付け合いが繰り広げられる。
その中で真っ直ぐに手を挙げた蛍の様子には自分も、仲間たちも心底驚いた、と歩は昨日のことを思い出しながら頷いた。
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