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初等部からの持ち上がりのため、今更なんとも思わないが、右を見ても左を見ても、男男男。
生徒も教師も男なのだ。楽園はない。
「さっさと行くぞ」
ぼんやりと考えていたら、軽く頭を叩かれ我にかえる。
「痛い」
「うるせえ」
そのまま足早に進んでいく背中を、小走りで追いかけた。
なんとなしに、隣の男の顔を見上げる。
文月 棗
染めた様子のない真っ黒な髪と同じ色の瞳。
すべてのパースがあるべくしてある所に配置されている整ったご尊顔。
面倒くさがりな性格が顔にまで出ており、気だるげな美形と評判だ。
出席日数の関係で、クラスが離れがちだが、今年は一緒のクラスになった。
珍しく、ちゃんと授業に出てたっぽい。
「棗、お前ちゃんと授業に出たらいいクラス入れるんだから、程々にさぼれよ」
「お前もだろ」
昼寝スポットが大分かぶっているせいか、授業を抜け出す際、こいつとよく一緒にいることが多い。
そのせいで、噂になっているらしいが、別に示し合わせたわけではないし知ったことではない。
「今年はお前も連れて抜け出すか…」
「おい、道連れにしようとするなよ」
割と本気に考え出した棗の腕を叩き、2−Sと書かれた教室の戸をくぐった。
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