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陽が傾き2人しかいない音楽室を赤く照らす。
「俺のは只の自己満足だよ」
柔らかくそう告げる蛍の姿は、夕日に染まり、先ほどこの部屋に駆け込んできた時と同じだと、歩はそう思った。
いつもは緩く笑って流れに身を任す友人が、取り乱す様子を久しぶりに見た。
それも相手は執行部に在籍する高嶺の花。
"アンナ怖い人"といつ出会ったのか。
(嫌だなァ)
ぼんやりと蛍の姿を眺めながら、心の隅の僅かな痛みも、自分には関係ないものだと排除して、いつもと変わらぬ笑みを浮かべ告げる。
「僕は、ケイ君のそういうとこ、好きだよォ」
いろいろな感情を隠したその言葉に、ありがとう、と蛍は微笑んだ。
side Asahina Kei
side Aihara Ayumu
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