「退屈だな」

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いつもより早めの時間だからか、まだ登校している生徒は少ない。 先に歩く棗にひっついて、にこりと笑い一言。 「おはようございます」 「お、おはようございますっ!緋扇様!」 「今日はお早いんですね」 帰ってきた返答に適当に相槌を打って流す。 隣から呆れたような視線が降ってくるが、無視だ。 この学園は、両家の子息達が集まる所なのだ。 将来のことを考えて、緋扇の家の不利益にならないように振る舞えと言いつけられている。 自分が女顔なのは理解しているため、やさしげな笑顔を貼り付けて、丁寧な対応をしておけば大抵の人間は騙される。 おかげで外面は花丸だ。 にこやかに対応してから、席についたその時。 「おい尊、ちょっと面かせ」 後ろから声が聞こえたかと思えば、肩を引かれバランスを崩す。 そのまま、ポスンと広い胸板に受け止められた。 状況がつかめないまま、声の主を見上げる。 そこには、初等部からクラスがずっと一緒で出席番号も前後の腐れ縁が。 「おはようございます、恭介」 「おう。お前、俺が昨日言った言葉覚えてるよな」 思い当たることがありすぎて、自然と視線を逸した。
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