「あなたの笑顔が曇らぬように」

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「………きれい」 口から出た言葉は正しく本心だった。 見下ろす先には一本の髪結い紐。 真ん中は真紅、そこから先に行くにつれ徐々に薄くなるグラデーション。 紐の両端に、小ぶりな金色の鈴が煌めいている。 シンプルだが、とても美しいものであった。 「いいんですか、いただいてしまって」 これ、かなり貴重なものでしょう、と尋ねる。 「……俺らがお前にやりたいと思ったから用意したんだ。気にせず使え」 紅茶を飲みながら恭介が言った言葉に、皆一様に頷くのを見て、改めて箱の中身を見下ろす。 「ありがとうございます。大事にしますね」 自然とこぼれた笑みはきっと、今まで浮かべていたものとは違うものだ。
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