「あなたの笑顔が曇らぬように」

24/44
前へ
/183ページ
次へ
急に真剣な面持ちになった双子に、それほどまでに変なことをしてしまったかと、こちらも背筋を伸ばす。 「だって、前の赤いのは」 「文月センパイに攫われちゃったでしょ?」 一言一言迷うように、しかし何かに気づいて欲しそうに紡がれた言葉を反芻する。 確かに、前の赤い結い紐は攫われていったため、今は昔使っていた青の結い紐を使っていた。 付け替えるために外した青い結い紐を見下ろす。 前使っていた赤い結い紐も、中等部から使っていたものだが、こちらは初等部から使っていたものだ。 あの日さらわれてしまったものの代わりに、掘り起こしたんだよなぁ。 「「やっぱりみこちゃんは赤が似合うもんね!」」 どうやら、青い結い紐を使っていることに気づき、新しいものを用意してくれたらしい。 「……ありがとうございます。ではこれからは、こちらを使うことにしますね」 小さな二対の鈴に触れ、チリンと鳴らす。 小さく微笑むと、双子も返すように笑ってくれた。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1281人が本棚に入れています
本棚に追加