「あなたの笑顔が曇らぬように」

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「あの、緋扇様……」 「はい、なんでしょう」 そのままカウンターで近況を聞いている時、1人の委員がおずおずと声を上げる。 「もしかして、今日いらっしゃった理由は朝比奈様の副委員長就任が決まったからでしょうか」 勢いのままというふうに告げた言葉に、カウンター内が湧いた。 ちなみに、図書館で話す時は委員全員が自然と小声になる。 前に図書館の静寂を己が乱すわけにはいかないと、なんとも気合の入った口調(ただし小声)でそう言われた。 「いえ、立候補する方も他にいると伺っております。しかし、朝比奈君を推す声はたくさん届いていますよ」 そう告げると、立候補…?と不思議そうな顔で返された。 なぜに。 予想外の反応に困りきった俺は背後に人がいることに、不覚にも気がつかなかった。 「その件なんだけどね、尊様ああああっ」 いきなり震えた声と共にガッシリと後ろから肩を掴まれる。 あまりにも不意打ちすぎて、体が一瞬跳ねた。
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