「あなたの笑顔が曇らぬように」

33/44
前へ
/183ページ
次へ
人のいないテラスは、暖かな日差しに包まれて気持ちが良い。 そこに置かれているベンチに二人して腰掛けた。 そのまま、さてどうしようかと外を眺めていると、 「……聞きたいことってなんですかー?」 しばしの沈黙に耐えきれなかったのか、朝比奈の方から口を開く。 「そうでしたね。…では、朝比奈くん。貴方は本は好きですか?」 その問いに、朝比奈は状況をうまく飲み込めていないというように瞬きを繰り返した。 「え、っと…まぁ、好きか嫌いかと言われると、好きですねー」 困惑したまま、少し考え込んで出した答えに、承諾を返し、問いを重ねる。 「図書委員の仕事はお好きですか?」 「暇な時は本読んでればいいしー、嫌いではないですよー」 「では、私の事はお嫌いですか」 数回同じような問いを繰り返し、朝比奈もあなり悩まず答えてくれるようになった頃、不意をついて尋ねてみた。 あの時、俺を射抜いた視線の意味。 正直、嫌われているなら、早めに知っておきたい。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1282人が本棚に入れています
本棚に追加