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顔をうつむかせ、黙り込む姿は混乱しているようにも、怒っているようにも、悲しんでいるようにも見える。
「以前お会いした時、私に対して思うところがあるご様子だったので、もしかして嫌われているかもと…。失礼いたしました、不快に思われましたか?」
安心させるように、なるべく柔らかく、ゆっくりと告げる。
「ちがっ………っ」
勢いよく顔を上げた表情は、迷子の子供のようだった。
「違いっ…ます。俺はっ」
伝えたいのに言葉が出ず、奥歯を噛みしめる。
されども言葉は出てこない。
そんな様子の朝比奈の強く握りしめられた手に触れた。
その瞬間ぴくりと反応し、驚いたような表情がこちらへ向けられるのに笑みを一つ返し、ゆっくりとその手を緩ませる。
「ゆっくりで大丈夫ですよ。ちゃんと聞きます」
ようやく開いた両手に怪我がないことを確認し、再度微笑んだ。
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