「あなたの笑顔が曇らぬように」

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朝比奈は泣き出しそうに顔を歪め一瞬俯くと、ゆっくりと顔を上げ、俺の目をまっすぐ見た。 「俺は……俺は、どうしようもなく臆病で、意思を持たずに流されて、大事なことを伝えることもできずに誤解されて」 どんどん言葉が尻すぼみになり、俯く朝比奈の手を強く握る。 「でも、俺、あんたのこと嫌いとか、それだけは違います!これだけは…これだけは誤解されたくないです」 握る手を弱々しく握り返す朝比奈を見た。 今にも泣き出しそうに歪められた顔に、伝わっているかと不安げな様子に小さく笑う。 「大丈夫、伝わっていますよ。すみません、少々意地悪を言いましたね」 俺のことを見つめる垂れ気味の双眼から、ポロリと一粒雫が落ちた。
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