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片方の手を離し、頬を伝うそれを親指で拭う。
名残惜しげに離された手を追う朝比奈のそれに、本当に嫌われていないのだと安心した。
そのままその頬に手を当て、揺れる瞳を覗き込み告げる。
「臆病でも、流されても、あなたは自分の気持ちを素直に伝えることができます。それだけで十分素敵なことだと、素敵な人だと私は思いますよ」
だから、泣かないで。
ボロボロと流れる雫を両の手で拭おうとしたが、繋いでいた片手は握り締められ、離せない。
仕方がないと苦笑し、その頭を引き寄せた。
肩越しに冷たく濡れた感触がする。
香水だろうか、ほのかに香るシスラスの香りに瞳を閉じた。
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