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人間の命が尽きる時、死神が鎌を持って命を刈りにきます。 その人間が死ぬ数日前から姿を見せて死の覚悟をさせようとする死神もいれば、無駄に怖がらせないように死と同時に現れる死神もいます。 死神によってやり方はそれぞれでしたが、ある死神は人間が死ぬ五分前に現れました。そして、必ずこう言うのです。 「お前の命が尽きるまで、あと五分。この世に思い残すことがないように、五分だけ猶予をやろう」 死神から告げられ、パニックになって何も出来ずに五分を終える人もいれば、身近な人に感謝を伝えたりして五分を有効活用する人もいました。 後悔のないように五分の猶予を与えてくれるのだから、その死神は優しい性格なのではないかと思うのかもしれませんが、そうではありませんでした。 刈りとった魂の数は死神の昇格にも関わってくるため、なるべく多くの魂を刈りたいところですが、ただむやみやたらに刈ればいいということでもなく、そこには厳密なルールがあるようです。 全てのルールを説明すると長くなってしまうためここでは省きますが、たとえば、あまりにもこの世への未練が大きい魂は地縛霊となってとどまるため、刈ることができません。 まだまだやりたいことがあったのに突然死してしまった魂も未練を大きく残してしまう可能性がありますが、猶予を長く与えすぎると逆に生への執着が強くなってしまう可能性もあります。 そのため、長いようで短いような五分という時間がちょうど良い猶予だとその死神は考えたのです。 その死神は人間の命が尽きることなど、何とも思っていませんでした。魂を刈ることは作業でしかなく、猶予を与えるのも、なるべく効率良く魂を多く刈るための手段でしかなかったのです。 しかし、そんな死神にも大切に思う恋人がいました。 死神の恋人もまた死神でしたが、恋人の方は正反対の性格で、いつも自分が魂を刈りとる人間に感情移入し、死の瞬間に涙していたのです。 死神の恋人は、大抵は人間の死の数日前からこっそりとその人間に付き添っていました。 あるとき、死が近い人間の側にいるうちに感情移入してしまい、運命をねじ曲げ、その人間を助けてしまったのです。 もちろん、死神が人間が助けることなど許されるはずがありません。掟を破った死神は、その死神の家族か恋人から命を刈られることが定められています。 今回も例外ではなく、人間を助けた死神の恋人が鎌を持って命を刈りにきました。現れたのは、例によって命を刈りとる五分前です。 「バカなやつだ。人間なんて助けなければ、永遠にも近い時を生きられたものを」 そう言って恋人に鎌を振りあげながらも、死神は涙を流していました。その死神が生まれて初めて流した涙でした。 その死神からしたら人間なんてチリと同等の存在でしかなく、チリを助ける死神なんて愚かだと思っていました。しかしそれでも、恋人を失うことは身が裂かれるように辛いことだったのです。 人間は死神が生きる時に比べたら短い時間しか生きられませんが、その代わり死んでも魂は消滅せず、生まれ変わることが出来ます。しかし、死神は永遠に近い時を生きることが出来る代わりに死ぬと同時に魂が消滅してしまうのです。 そういったわけで、事実上これが永遠の別れとなることをどちらも分かっていました。 死神の恋人もまた涙を流していましたが、掟を破った自分が悪いと自覚していたので、静かにその命を刈られる時を待っていました。
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