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放課後の怪異
東京都、立川市某高校。放課後。
二年生の大川拓真は、校庭のバスケットゴールを使って遊んでいた。中学までバスケットボール部だったが、高校に入ってからは帰宅部だ。両親は「続けたら良いのに」と言ったが、中学三年で引退して、受験勉強期間ずっとバスケットボールをやらずにいたら、「こう言う選択肢もありなのかもしれない」と思うようになった。飽きたのか、潜在的に辛くてもうやめたかったのかは自分でもわからない。けれど、高校に入学して、部活紹介を見ていたら、もう部活に入る気はなくなっていた。
それでも、バスケットボールそのものは好きだったから、友達を誘ったり、一人でこうして遊んだりしている。何かしらには入っておいた方が良いから、と言う事で、友人に誘われた美術部に入ってはいる。活動は緩く、作品製作も熱心な部員の手伝い程度で許された。
部室には常に誰かしらいるが、活動日は週に二回だ。そして今日は活動日ではない。拓真が校庭でバスケットボールを弄んでいるのもなんら不自然なことではない。
ふと視線を感じて、校舎を見上げる。二階の窓から、指定制服を着た少女が、窓枠肘を突いてこちらを見ていた。薄らと笑みを浮かべている。可愛いな、と拓真は思った。結構俺の好みかも。少しだけどきどきしてしまう。
でも、何年生だろう? あんな可愛い子がいたら、男子の間で話題になりそうなものだが。まあいいや。ついでに聞いとこう。
「ねえ、降りてこない? 一緒にやる? 見たいなら近くで見なよ」
少女は少し照れた様に頷くと、身を乗り出した。拓真があっと思う暇もなく、彼女は二階から飛び降りた。
「ちょっと!」
落ちてくる彼女はどこか妙だった。けれど、違和感の正体を確認する余裕などなく、拓真はボールを放り出して駆け寄って……絶句した。
スカートから脚が出ていない。
「うわあ!」
拓真は後ずさった。少女はにこにこしたまま、手の動きだけで凄まじいスピードを出して彼に向かって来た。下半身のない虫を想起させるような動き。拓真の脚が、放り出してボールを踏んだ。すぐに起き上がって逃げないといけないのに……起き上がり方を忘れてしまった。愛らしい笑顔のまま、少女は拓真に向かってくる。肘を曲げて跳躍する。それを見た拓真は、喉の奥から叫び声を上げた。
数分後、悲鳴を聞きつけた教職員と生徒が駆けつけた時、彼は数カ所に噛み傷を作った状態で発見された。
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