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「幾松さんは桂さんとどうお知り合いに?」
今度は紗恵が幾松に問うた。
「始めはお客はんやったんよ。次第に惹かれ合うてなぁ…。ほんで小五郎はんが身請けしてくれはった。ほんま伊藤はんには感謝してもしきれへんわ」
「伊藤って、まさか俊輔ですか?」
予想だにしなかった名前に稔麿が首を傾げている。
「ああそうだ。私が身請けしたいって思ってたら、邪魔が入ったんだ。金持ちのお大尽でな、その男も幾松を気に入ってて、幾松を取られてたまるかっ、てな。私もその時は大した禄もない一介の藩士だったから真正面からやり合っても勝てんかった」
幾松は人気ナンバーワンの芸妓だったと言う。
桂と大尽はお互いに張り合い、桂も大金を惜しみなく使っていたらしい。
だが桂には限界があった。
「それでなぜ伊藤さんが出てくるんです?」
紗恵も疑問を呈する。
「なんとな、俊輔に相談したら、俊輔はそのお大尽に刀を突き付けて脅したんだ」
「はい?」
紗恵と稔麿はその不穏当な言葉に驚きを見せた。
「はははっ。そのおかげでお大尽は邪魔をしなくなって、私は幾松を身請けできたんだ」
(未来だったら、「人気ナンバーワンの芸妓を取り合って刃傷沙汰に発展」とかいう記事が新聞に載りそうだな…)
「それは良かったですね…」
「そやから、うちが小五郎はんと一緒に居られるんは、伊藤はんのおかげなんよ」
(未来でも有名なおしどり夫婦は、伊藤博文が結んでたんだ。やり方はどうかと思うけど)
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