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次の日の朝、土方は局長、副長、全組長ら幹部を緊急招集し、幹部会議を開いた。
また、監察方からの情報提供という名目で南と山崎も列席させた。
当然南の列席は全て土方の思惑である。
この時点で、南が間者であると知っているのは、局長(近藤)・副長(土方・山南)・山崎の4人のみ。
いや、南も含めれば5人である。
まず、土方が口火を切った。
「今回招集したのは、尊攘派浪士に新たな動きが見られたからだ。山崎、説明しろ」
「へぇ。監察方が得た情報によると、先日の屯所襲撃以来、尊攘派の行動が活発になっとる。ほんで、前よりも油断が生まれとる。そやから、街に出とる浪士を捕縛するには今が絶好の機会や」
これは事実だ。
だが、事実を知らしめる為だけに会議を開いたわけではない。
「というわけで、明日以降の巡察に変更を加える。具体的には、浪士が最も多く潜伏していると思われる、長州藩邸・土佐藩邸を中心とした一帯の巡察を強化する。また、潜伏浪士の捜索も任務に加える」
「具体的な人数は?」
沖田が問うた。
「現在の2倍から3倍」
「しかし、それだけ多くの隊士を藩邸近くに割いてしまえば、他の地域の巡察が充分に行えなくなります」
当たり前の疑念だ。
「だが、藩邸近くには多数の浪士がいる。隊士を増やして徹底した巡察・捜索を行えば、相応の成果が期待できるはずだ」
一同は納得した。
だがこんな偏った編成を土方は実行するつもりはない。
早々に対策を取られて成果があがらなくなると分かりきっているからだ。
だが、今回はこの情報が尊攘派に伝わりさえすればいい。
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