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「次に南から報告がある」
土方は南に話を振った。
「三条の料亭 山川屋に尊攘派浪士の出入りが確認されました。確実に店主は浪士の協力者です」
これも事実だ。
だが、紗恵が新撰組に提供しても良いと言ってある情報だ。
確かに店主は尊攘派の協力者である。
しかし、彼は尊攘派の活動の詳細を全く知らない。
また、店内にも書簡や武器などの活動を証明できるものもないため、もし捕らえられても尊攘派は不利益を被ることはない。
店主自身もただ「利用された」と判断され、即釈放になると紗恵は確信している。
「山川屋を重点的に監察方に調べさせる。ただし、準備が整ってからとなるため明日以降になるだろう。そして次に浪士の出入りが確認された時点で、店主を捕縛し店内を捜索する」
これは嘘だ。
既に山崎を経て、山川屋を捜索しても無意味なことは分かっている。
「いつでも山川屋の捜索に行けるよう体制を整えておけ!」
「ハッ」
「では解散!」
近藤が締めくくった。
土方は部屋を出る隊士たちの間をぬって、南と山崎に近づいた。
「2人とも、重要な情報を感謝する。今からも監察任務に尽力してくれ」
「ハッ」
そうして南が屯所を出たのを確認すると、再び全組長を招集した。
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