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日が低くなるにつれて紗恵の不安は増してくる。
「紗恵さん、顔色が悪いぞ?今日は家で休むといい」
桂が声をかけた。
「大丈夫です。参加します」
「分かった。ところで…なにか違和感を感じないか?」
「桂さんもですか…。でも違和感の正体が分からないのです」
「池田屋事件をなくして、多少なりとも未来が変わったせいだろうか」
「そうかもしれません。これから先のことは、全て史実通りに進むとは限りませんからね」
紗恵は怖かった。
未来を知らないのは当たり前なのに、未来の知識を完全に信用できなくなったことが怖かった。
幕末に来てからずっと、自分の知識に胡座をかいていたとようやく気づいた。
(私はもう未来人ではない。この時代で生きていく、幕末の人間なんだ)
紗恵は軽く頬を叩いて前を向いた。
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