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序章
20××年
今日は成人式。
そして、夏生 紗恵の20歳の誕生日でもある。
例年より早い初雪が積もり、辺り一面は美しい白銀の世界になっていた。
誕生日プレゼントは深みのある青色の振袖だ。
紗恵はレンタルでいいと主張したが、両親が奮発して反物から誂えてくれたものだ。
背の高い紗恵にとてもよく似合っており、また、この日のために伸ばしていた髪は高く結い上げられ簪が差し込まれている。
紗恵は両親と一緒に成人式の会場へ続く階段を昇っていた。
しかしその階段には除けきれなかった雪が踏みしめられ固まり、とても滑りやすい状態になっていた。
「あっ…」
履きなれない草履で足元が覚束ない紗恵は足を滑らせ、重力のままに下方へと落ちていく。
最期に紗恵が見たのは必死の形相で階段を駆け下りる両親の姿だった。
(ママ…パパ…助けて)
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