大英帝国を語るために

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結局誰も匂いの正体を突き止められなかったが、少しして紗恵が運んできた皿を見て伊藤と井上は驚きの声を上げる。 「これは…!」 「ふふっ。ご推察の通りフィッシュアンドチップスです」 紗恵は悪戯が成功した子供のように笑んでいる。 「まさか日本でこれを食べられる日が来ようとは思わなんだ」 「夕食でエゲレスの話をするのなら、雰囲気を出すためにもこれしかない、と思いまして。カトラリーは用意できなかったので箸でお食べください」 2人は今にもよだれを垂らしそうな顔で頷いた。 「そのフィッシュなんとかって何だい?」 伊藤たちと違い、初めてこの料理を目にした稔麿は興味深そうに問う。 高杉も目で答えを求めている。 「フィッシュアンドチップス、です。白身魚とじゃがいもを使った料理で、エゲレスの庶民にとっては最も定番の料理のひとつなんです」 「ほぅ、それは興味深い」 「美味しいし、お腹にも溜まりますし、作るのも難しくないので私の大好物なんです。チップス…じゃがいもの方はおかわりがありますからたくさん食べてくださいね」 稔麿は楽しみだと皿をまじまじと見ながら箸を取る。 高杉も続いた。
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