大英帝国を語るために

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「スターゲイジーパイ、あれはあまりも衝撃的すぎて口が閉じられなくなったよな」 「ああ。あれほどまでに趣味が悪い料理は生まれて初めて見た」 井上の問いかけに伊藤も肯定した。 「同感です。しかし見た目は酷いものですが、味はなかなか美味しいと私は思いました」 紗恵は味については概ね高評価だ。 「そ…うか?」 しかし伊藤と井上は揃って信じられないといった顔で紗恵を見た。 「趣味が悪いって一体どねーな料理じゃ?」 高杉は食事を形容するに相応しくない言葉遣いに、不思議そうに問うた。 「魚が突き刺さっていて、さらに頭と尾が飛び出している料理です」 伊藤が簡潔に答える。 その答えは事実なのだが、高杉と稔麿には想像できないらしくさらに頭を傾げた。 「スターゲイジーパイ、日本語に訳すと、星を仰ぎ見ると言ったところでしょうか。星を仰ぎ見るように頭を上にした魚を、生地に突き刺した料理です。しかも魚は1匹だけでなく、何匹も突き刺すのです」 井上が補足説明する。 それでもあまり理解してもらえていないようだ。 (確かに、あの見た目の衝撃は実際に見てみないと分からんわなぁ) 「百聞は一見に如かず。材料が手に入ったらいつか作りましょうか?」 紗恵の提案は、伊藤と井上の全力の首振りによってあえなく却下された。 稔麿も高杉も多少の怖いもの見たさ(食べたさ)はあるようだが、あまりの低評価に食べる気は起きず、その必要はないと答えた。
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