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伊藤にとって進発は寝耳に水であった。
驚きを見せた伊藤に稔麿が簡単に説明し、馬関海峡封鎖の話に戻る。
「元は欧米列強から日本国を守るための攘夷だったはずです。それなのにその攘夷を遂げるための戦で国を滅ぼしてしまえば本末転倒ではありませんか」
「確かに戦をするたぁ愚の骨頂じゃ。じゃけどな、政治的な戦略としちゃ悪うはないと思うんだ」
「それはどういう…」
これまでとは打って変わって、ある意味では戦を肯定するとも思える高杉の発言に伊藤と井上は驚く。
「大した戦もせんと圧力に屈しては、これから先ずーっと欧米国に足元を見られることになる。そうすりゃあこの国は早々に欧米国の傀儡と化すじゃろうけぇな。戦をすることで一筋縄ではいかんと思わせることができれば、少のうとも欧米国との戦は無意味にゃあならん」
「ですからその為に国が滅んでは本末転倒だと思いませんか?」
「国が滅んだら本末転倒じゃろうな。だがそうはならんさ。家老らも口では徹底抗戦と言いよっても、数多の兵の命を負えるほどの度胸やらありやせん。それにエゲレスも俊輔と井上の開戦阻止行動に便宜を図ったというこたぁ戦に乗り気ということでもないのじゃろう?」
それは確かに、と伊藤は頷く。
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