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1つのマッチにつき、時間は15分。
マップはそれに適した広さになっており、二人ですべてを回って調べることは可能だった。
『あった?』
ケルカが聞く。
『いいや、ないよ』
思っていた通りの答えが、ミズキから返ってくる。どうやら、たいしたことないようなレベルのアイテムですら、一つもないようだ。逃げ道として唯一解放され続けているはずの、洞窟すら見つからない。もともと人が抜ける前までは二人だけのマッチではなかったから、アイテムが少ないことは何ら不思議ではないのだが…
『一つも、ないよ。洞窟も全く見当たらない』
あまりにも不自然だった。それどころか――
『――警察、いなくない?』
その言葉に、ケルカは不安な気持ちになる。何がどうとは言えないが、嫌な予感がした。敵がいないマッチなど、いったい何を目的にしているのだろうか。
残り時間はあと12分。二人は、これ以上このマッチにいても仕方がないと判断する。
『次行こう、次。経験値なんかこの際いらない』
『そうだね、これ以上は時間の無駄だ』
メニューを開いて、マッチの退出を選ぶ――はずだった。
『え、出れないんだけど』
ミズキがコントローラーのボタンを何度も押す音が聞こえる。ケルカの画面でも、同じことが起きていた。
『俺も』
『なに?マジで。バグ?強引にシャットダウンする?』
『あんまりやりたくないけどな』
『でも出れないよ?』
彼らは頭を抱えた。もともとバグは少ないゲームだ。こんなバグは、ゲームを長くやっている二人でも初めての経験だった。
メニューをとりあえずあきらめて、ゲーム画面に戻る。
すると――
『ん?なんこれ』
『あと10分…って、知ってるわ。上見りゃのってんだよ』
『ん~とりあえず合流しとく?』
ミズキが合流を提案する。ケルカは、特にやることもないし、同じ画面に誰かがいる方が退屈しないだろうと思い、と受けることにした。
マップの左中央のあたりで合流し、見つかりずらいように地下通路がたくさんつながった家々で籠城を試みる。
そして位置を決めた後、ミズキがコントローラーを置く音が、マイク越しに聞こえた。
『あと10分なら、このままここにいようか~』
『そうだな』
静まり返ったゲーム空間に、ケルカのキャラクターの足音だけが響く。通常なら、探知されてもおかしくないが、なんせ敵役がいないのだ。いくら暴れたって問題あるまい。
ケルカは、唯一初期装備につけておいた火炎放射器を、絶対に燃えないオブジェクトに向けて発射した。
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