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最初に異変に気が付いたのは、ミズキだった。
『え?なんかあと5分って出たんだけど』
『は?』
時間を見ると、あと7分はある。現実世界なら2分くらい大したことないが、ゲーム内なら2分で大分状況が変わる。そんなバグがあるなら、即運営に報告ものだ。
『なんかフォントも違うし。なにこれ』
『ほっとけば?どうせバグかなにかだろ』
ケルカはもうすでに、コントローラーから手を放していた。暴れるのも武器が壊れたのでできなくなり、ミズキと雑談するくらいしかやることがない。
そのミズキに異変が起きたのは、残り3分――つまり、ミズキの画面で残り1分と表示された時だった。
『ん?なに、え?』
ミズキが何かを振り返って言う。キャラクターには何の動きもないが、ミズキ自身は動いているらしい。声がマイクから遠ざかり、布の擦れる音がした。
『どうかした?』
ケルカが問う。その問いに、ミズキは少し震えた声で答えた。
『 だ れ か い る 』
とたん、画面がぶつりと音をたてて、ノイズとともに不穏に切り替わった。
映ったのは、ミズキの部屋だった。
真っ暗な中に、ディスプレイの光だけが煌々とミズキの顔を照らしている。
ディスプレイを見つつ背後を振り返るミズキの顔はこわばり、肩が震えているのがわかる。机に手をつきながら、背後のドアを凝視しているミズキの目は、恐怖に歪んでいた。
『ど、どうしたって言うんだよ…』
『だ、だだって、物音が…すごい、物音がっ!!』
ヘッドセットのマイクでは、ミズキの声しか聞こえない。ケルカはミズキのその並々ならぬ様子に、得体のしれない気持ち悪さを覚えた。
気が付けば自分の画面にも、あと5分と出ている。
ゲーム画面の残り時間はもはや、何も示してはいない。
5分。
あと5分。
なにが、あと5分なのか。
その文字に、ケルカは吐き気とも、なんとも形容しがたい気持ち悪さを抱く。
それは、やがて現実になった。
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