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『うっ、うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
ミズキが叫ぶ。喉がちぎれそうな勢いで、叫ぶ。
ヘッドセットに直接吹き込まれたその断末魔のような叫びに、ケルカは慌てて自分のヘッドセットを外そうとする。が――
目の前の光景に目を取られ、動くことができなかった。
『た、たすけっ…!!』
『あ、ああああ、あ…』
ミズキの頭をゲーミングチェアに押さえつけ、ミズキがゲーム内で持っていたのこぎりのような刃物を突き付ける、人影。
その上背は2m近く、フードに隠れたその先では、恍惚の表情を浮かべている。
ケルカは声が出せなかった。あまりにも嘘くさい。だが、その圧倒的な物質感に、純粋な恐怖を抱く。
『かける…たすけ…!!』
『み、みずき…っ!』
大男は、ミズキの首に突き付けたのこぎりを、ゆっくりと、味わうように、楽器を奏でるように、強く押しつけて、優しく、苦しむように、弾いた。
『あっ、あががが、がっ…ががが、がががあががががががが……がはっ』
ミズキの首から、激しく血飛沫が噴出した。絶望したように笑っているみずきは、もはや空気をひゅうひゅうと漏らすだけで、絶命している。カメラを汚したのか、べっとりとついた血がモニターに映っていた。
大男は丁寧にもそれを拭き取ると、にやにやと笑い、恍惚の表情を浮かべ、待ちきれないとでもいう表情で、カメラに向かって言う。
『殺しに行くね』
ぶっつりと、画面が途切れる。
ケルカは――かけるは、真っ暗になったそれから目が離せなかった。
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