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「だが、王子は普通の御世話では足りないのだ。王子の身体の弱さ……陛下譲りなのか、身体も小さく、ご病気ばかりで成長も発達もどんどん遅れていく。乳母たちは何人もの赤子を見ているからすぐにその未熟に気がつくのだ」
「そんな」
「だが何としてもアルガ王子にはご立派に成人して次代の王になっていただかなくては」
リン王妃その部分だけ突然に姿勢を正しくして言い切った。確かにリンにとっては、そのためだけにアルガ王子の存在意義があった。
「どうしてそのように心配されるのです?」
アルフはふとまたしても王室のルールを破って尋ねてしまった。
しかしリンはもはや咎めず、値踏みをするようにじっとアルフを見つめた。アルフはその視線に耐えかねて、言い訳するように続けた。
「これだけの手厚い御世話を受ければ、必ずやアルガ王子は無事に成長遊ばされます。子供の成長など、型どおりに進むわけではございません。しかも王子に競争は必要ないのです。この確かな御血筋から導き出された正当な第一王子である以上、ただ大きくおなりになればそれだけで王座は確約されているのですから」
「そなた、口のきき方を知らぬ」
リン王妃がいきなり立ち上がったのでアルフはその場に跪いた。
「陛下がそなたをお気に召して、この座を推薦されたと聞いたが、陛下とはどの程度懇意に?」
アルフはたじたじとなった。
「懇意などとはとても、私は一介の軍人でございます。
ただ陛下には玉座よりその武功を御褒め頂いたのと、戦況のご報告を何度か致したぐらいでございます。あとはせいぜい行事などで宮中の護衛をさせていただき、お近くに配備させていただいた程度で、個人的な会話などは一度たりともございません。
たとえばブライト様などであれば、深き交わりが御有りでしょうが、私は卑しい下級貴族の出でございますから」
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